つづきで沢井忠夫さん。昨日は、ここ最近聴いてた『琴・セバスチャン・バッハ大全集』についてでしたが、きょうは、その魅力にひきよせられたきっかけアルバムのこと、その他いろいろ。

沢井忠夫さんのお名前、ワークを気にすることとなったのは、いまや人間国宝となられている山本邦山さんのジャズ作品をたどりはじめたことからでした(これはまたさらにたどると原信夫さんのことからなのですけど)。

2年ほど前に出会った、1968年リリースの『琴、尺八、ビッグバンドによるスタンダード・ボッサ』というアルバム。この作品は、そのタイトルが語るように、邦楽器のアンサンブルとビッグバンドのにより奏でられるボサノヴァの世界。宮間利之とニューハードと尺八に山本邦山さん、横山勝也さん、琴に沢井忠夫さんというメンバー。編曲は、ニューハードの山本幸三郎、高見弘さんで、このお二方が、また邦楽サイドのよさとビッグバンドのよさをいかした、なんとも見事なアレンジをされてます。もちろん、邦楽とジャズの融合作品では、この後、洗練されたサウンドも出てきたりだと思うのですけど、歓びとチャレンジの躍動感のようなものを感じるアルバムで。
(アルバム収録曲ぜんぶがというわけではなく、なかには、宮間利之とニューハードのみでのものも)

1曲目、「黒いオルフェ」のテーマでもある『フェリシダージ (悲しみよさようなら)』にすっかりやられ…

Adieu Tristesse (A Felicidade):
演奏:山本邦山、横山勝也、沢井忠夫、宮間利之とニューハード・オーケストラ(この曲の尺八は邦山さんのみかな)
「琴、尺八、ビッグバンドによるスタンダード・ボッサ」 (1968年)



どの曲もすばらしいのですけど、沢井忠夫さんの琴は、『Constant Rain』でも、まことに見事。

沢井さんのいろいろは、オフィシャルサイトのプロフィールや年譜などにもくわしいのですが(年譜のページにあるお写真すべてよいですね。山本邦山さんと腕相撲しているものなど、とても♪)
沢井忠夫記念館:プロフィール/ 年譜

琴は、尺八奏者であるお父様のすすめではじめ、その後。東京藝術大学邦楽科へ。1964年には、山本邦山さんなどと「民族音楽の会」を結成し、ジャンルをとびこえた演奏を邦楽器奏者としてきりひらき、1960年代半ばから1970年代半ばまではジャズ・ミュージシャンとのワークも多く、赤坂ミカドでも演奏されていたとか。「現在の生活に密着した音楽を作らなければならない」お持ちになり、その後は、ご自身で作曲した作品など、純邦楽とも前衛現代音楽のような邦楽ともまたちがった独自の世界を築かれた方ですね。

「いかにも芸術です」というのでもなく、ただの異なる楽器で斬新なことをすればということではない、というのは、ともすればなカヴァー曲ですら、楽しみとスタイルを感じる演奏でうかがえるような。

村岡実・沢井忠夫:男の世界 (MANDOM)
尺八:村岡実、琴:沢井忠夫、編曲:池田孝、UNION ALL STARS (アルバム他曲のスキャット:伊集加代子)



奥様、一恵さんも琴奏者であり(昨日書いたアルバム、琴・セバスチャン・バッハ大全集にも参加)、演奏、創作と、並行して、「沢井箏曲院」「沢井忠夫合奏団」をもち、奏者の指導にもあたり。日本のみならず、海外でも認められる存在に。

わたし、沢井忠夫さんの演奏出会いは、さきのアルバムだったと書きましたが、もっとずっとずっと前であったということに今回気づきました。

そうです、もっとも印象に残る「違いがわかる男」のおひとりでした。
(以前に歴代「違いがわかる男たち(女たち)」のことも書いてたのに…ネッスル(現・ネスレ) CM ネスカフェ・ゴールドブレンド

ネスカフェ ゴールドブレンド 違いのわかる男 沢井忠夫(1985年):
(そういえば、『違いがわかる男のCMソング NESCAFE CM Song Collection』も発売ですね)
当時、このCMみて、わっ、琴かっこよし!あぁ、なんで母は、わたしにお琴習わせてくれなかったんだろう…とかって思っていたのですよね(母は昔の習いごとでの「いちおう師範」、家にはお琴もあって…でも、よく考えれば、そのときからだって遅くはなかったですよね、十代だったし、じゅうぶんに)



ほんとに、日本の音楽の世界、邦楽界をリードされていた方、いまから15年ほど前ですね、1997年に59歳でお亡くなりになったのはすこし早かったのではないかとつくづくです。

(投稿:日本 2012年5月31日、ハワイ 5月30日)

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