ここ数ヶ月、参加も月例となっている、TV AGE講座 ヒットメーカーが語る作品誕生秘話シリーズ、先週土曜日12月の回は「 <映画音楽の巨匠>フランシス・レイ」でした。
前半レアトラック、後半はプライベートコンサートの映像という内容。
(↓講座、ご一緒しているアラッポさんのブログ記録)
TV AGE講座 <シリーズ映画音楽の巨匠>「フランシス・レイ」詳細
講座では、いつも、自分ではなかなか得られない音源の鑑賞や情報が中心なので、自習として、代表作なども聴いてみる活動を先週あたり(講座の前)からはじめて。

はじめは、やはりこれかなぁということで、まずは、『男と女(Un homme et une femme)』(1966年)のサントラを聴いてみたり、その20年後の『男と女Ⅱ(Un homme et une femme:Ving Ans Deja)』なども聴いていたりしていたのですけれど、ある程度、自分でもここをおさえたいというあたりがでてくると、ひとつの関連作品でも、たくさんのことに気づいたり、学びがあるのですね、と、つくづくで。

『男と女(Un homme et une femme)』を観てから、もう25年ちかくたってしまっているなぁ、と、映画もみてみることにしました。一度は、まずはとおしで、そしてさらに、メモとりながら、2回観賞。
映画、そのものも、あらためて、音楽、そのほか撮影、製作面、偶然も必然という名作だなぁと、つくづく、でした。

(以前にみたのはいつ、という正確な記憶はないのですけれど、ちょうど1986年上映だった『男と女Ⅱ』の前か後。『男と女Ⅱ』の方はタイミングのがし、みれなかったのですけれど、関連で名画座でオリジナルが上映とかされていたんだったのではないかと)

映画観賞は、映画館が気分というのもありますけれど、シーンごとのサウンドづかいなども気にしながらDVDでしっかり観るというのも、またよいですね。そして、DVDには、クロード・ルルーシュの近年のインタビューや撮影時のドキュメンタリーなどというボーナスも。いままで知らなかった、そうだったのかぁ、ということなどもあり。
この映画のさらなる魅力を感じることができました。

ということで、今回のレビュー活動は、サントラ聴きから先だったのですけれど、まとめは、まずは映画の方から。(曲の方は、いくつかにわけて書くつもりです(というか、そうでないとまとめできず。。))

Un homme et une femme (1966) trailer:
(長くなりそうなので、ここで一度トレーラー)
1966年上映に際した予告編。曲は、フランシス・レイ作曲の『男と女 Un homme et une femme 』。歌詞つきのボーカル・ヴァージョン。歌は、ピエール・バルーとニコール・クロワジール。



『男と女』、さまざまな賞も受賞し、フランス映画を代表する作品のひとつですが、美しい恋愛映画、というひとことでは、語れない作品だと思います。
(DVDのコピーは「あまりにも美しい、愛の物語」たしかに、なのですけれど。時に、その固定イメージがじゃまをしてしまうのではないかなぁと思うことも。この映画に関しては、作品評に関しても、作品紹介で書いてあるものより、この作品を好きな方がさまざまな視点で書いたものの方がよいことも多いですね)

作品の詳細はリンク参照:
男と女

クロード・ルルーシュの賭け:
13歳で蚤の市で手に入れたカメラをきっかけに映画を撮り始めた、ルルーシュは、軍の映画班でアルジェリア戦争の記録活動を。戦後、23歳で自らのプロダクションを設立。短編映画やコマーシャル・フィルム、いくつかの長編映画を撮っていたものの、資金繰りもうまく破産寸前となり。
そんなときに、生まれたのが、この映画『男と女』。
クロード・ルルーシュは、何かどうにもならないことがあるとひたすら車を運転し、ドライブにでかけるのだそう。ある日、車をとばし、パリからドーヴィルへ。海辺についたのが夜中の2時、そこで夜を明かし、朝日の中、ガラス越しにみかけたのが、こどもと犬をつれ、ひと気のない海岸を散歩する美しいひとりの女性。
そこから、この女性の日々と人生を思い描き、いっきに脚本に着手したそう。3週間で脚本、ひと月で準備、撮影3週間、編集3週間で製作。
瀬戸際の思いと、想像力をかきたてられる見知らぬ女性から生まれたものだったのですね。

人脈:音楽
すべてをつないだピエール・バルー
ピエール・バルーは、この映画での(タイトル)を歌っており、また、アンヌの死別した夫役として思い出シーンで映画にも出演していますが(思い出シーンといっても、この映画、それが多いのでかなりストーリー上も重要であり、割合としても多いですね)、ほかにも、製作、キャストなどでも大きな存在だったのですね。
クロード・ルルーシュとフランシス・レイをひきあわせたのも、バルー。
人脈:出演
ジャン=ルイ・トランティニアンがつないだアヌーク・エメ
いまでこそ、有名ですけれど、当時、監督としてはまだ知られていない存在であったクロード・ルルーシュが、この映画に主人公として使いたかったのが、アヌーク・エーメ。たしかに、この映画、「アンヌ」は、ぜったいにアヌーク・エーメでなければ、ならないのです。フェリーニ作品でもすでに名をあげていた有名女優。そんなエーメを出演させることができるのだろうか、と考えるクロード・ルルーシュだったのですが、この出演に関しては、エーメも、作品、意図などに賛同したということではありますけれど、出演をとりもったのは、「ジャン=ルイ」ジャン=ルイ・トランティニアンだったのですね。

音楽と映像:
クロード・ルルーシュの作品において、フランシス・レイの音楽は、なくてはならない存在であるわけですが、その製作プロセスにおいても、サウンドはじつに重要なものなのですね。
ルルーシュは、脚本の時点で、フランシス・レイに、そのイメージから曲を作らせ、撮影中も、出演者に何度もその音楽を聴かせ撮影をすすめていくのですね。
そこで、映画とサウンド、ストーリーのすべてが一体となった作品となるという。

そんな音楽と映像の織り成すお気に入りの美しいシーンをいくつか。

映像:
ドキュメンタリーとかみたあとだと、あぁ、建物の間から車がみえつつなシーンとかの撮影風景がなんとなく浮かびます(記録にはなかったのですけれどね)。桟橋でのシーン、あえて焦点がアンヌとこどもたちにあっていないところが、何ともやさしさとおだやかさの光景、そして、このシーンの一番な。
サウンド:歌詞なしのスキャット・ヴァージョン。おなじみのものよりアップテンポな『A 200 A L'heure (時速200キロ)』
A 200 A L'heure (時速200キロ) Un homme et une femme:



映像:
ドーヴィル、車中、パリのそれぞれのアパートのシーンはある中、パリの街の風景はすくないのがこの映画の持ち味。そんな数少ない、街の光景、ジャン=ルイへの気持ちに自分で気づきはじめたアンヌ(アヌーク・エーメ)の表情と歩く姿がとても美しく、かわいさも感じる。このシーンもとても印象的。
サウンド:歌:ニコール・クロワジール
Aujourd'hui c'est toi



と、音楽と映像の関係はもしろん、この映画の「ならでは」は、モノクロとカラーの映像のコントラスト、シャッフル。
とてもユニークなこの手法、インパクトがあると同時に、なぜか、とても自然にみえるのです。まるで、主人公たちの心の中をみているように、ストーリーに不思議に自然ととけ込み。
この手法、ずっと、計算されたものなのかと思っていたのですが、予算によるものであったのですね。ルルーシュは、はじめ、この映画を、全部白黒とも考えていたそうなのですが、カラーをやるのであればテレビ放送を前提に資金を出すというオファーがあり(当時はカラー推進時代)。それでも、予算上、カラーを全部にはつかえないということで、この手法となったのだそうです。
基本、屋内は白黒、屋外カラー(レースシーンは屋外でも白黒ですが、それがまたよし)。
そうだったのかぁ、なのですが、では、何がすごいかというと編集、ですよね。これだけ、その都合を、プラスな方向に、そして、ねらっていた効果とだれしもに思わせる。
ここも、クロード・ルルーシュのすごいところです。すべて、自分でやるからこそ、とおっしゃってるのもよくわかってきました。

このほか、この映画らしい、という手法が、意外な理由で、だったり。
きっとこの映画は、クロード・ルルーシュのパッション、瀬戸際が生んだ、すべての偶然、必然に祝福されていたのですね。そして、その祝福を見事にさらにすばらしい境地にもっていった、その才能をあらためて感じたのでした。
(なんかうまい表現がみつからいので、祝福されているという言葉しかうかばないのですけれど。。)

技法、手法についてのはじめて知ったのほかに、「あらてめて」はいろいろ。
ラリー・シーンは、実際にレーサーでもあるジャン=ルイ・トランティニアンが実際に助手席参加して撮られたというのも、はじめて知りました。

そして、あらためては、この物語にとって、とても大切である船のシーン。
はじめは、アヌーク・エメが、かなりいやがっており、絶対船には乗らない、フェリーニなら合成でうまくやる、とも言っていたそうなのですが、ここには、冬の午後の日差しと、海風、波、物語の登場人物が一体となっていなくてはならない、とみている側でも思うくらい、美しい時間、なので。
それを説得したルルーシュのパッションを感じます。



映画『男と女』に関しての最後の思うとこ。
この物語で、さまざまな大切な要素はあるのですが、やはり最大は、アンヌの美しさと心の動き。
そこが、この映画をとろうと思ったきっかけが美しい女性であったという、大事なところです。
アヌーク・エメは、きれいな方だし、ほかにもその魅力があふれる映画はあるのですけれど、この『男と女』でのエメは、ほんとうに美しく。ほかの作品ではあまりみかけない(わたしもすべてみている訳ではないので、ですが)、心の動きからでる、その表情のかわいらしさ、きれいというだけでないことが、ストーリー、心理としてもとてもすばらしい思うのです。

これは、ある意味、映画製作撮影自体にちょっと疑問や不安ももち、はじめは、クロード・ルルーシュの意向とアヌーク・エメの姿勢にぎくしゃくしたいろいろがあったことも、結果として、この物語の進行と同じように、その心も進行していったのではないかと思ったりするのです(勝手解釈ではありますが)。それが、また、結果として効果となり、よい方向へと。

『男と女(Un homme et une femme)』、「ただ美しいだけの映画」ではない、なのですけれど、やっぱり美しさはこの映画の魅力ではあります。ただ、ただそれだけではない、ということでした。

と、だらだらと、また長くなってしまい。。
この映画のフランシス・レイ音楽面、曲に関しては、またつづき

余談:
この映画、季節は冬、風、霧、雨がかかせぬ要素といこともあり、登場人物のムートン姿、それぞれのスタイルが気になります。かなりの時を経ての今回の観賞、ふたたび、あのAラインのすこし大人っぽいラインながら、留め部分と襟のバランスがとてもわかいい、あの濃い目カラーのムートンコートがほしくまりました。。。

(投稿:日本 2011年12月22日、ハワイ 12月21日)

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