ずっと心待ちにしていた、濱田高志さんによるTV AGE「テレビ・映画音楽の巨匠たち:宇野誠一郎」講座、9月24日土曜日に参加してきました。

参加ご一緒させていただいたアラッポ・カーロさんのブログ
こちらに、講座のようすなどまとめらてます。
アラッポ・カーロの備忘録:TV AGE講座 テレビ・映画音楽の巨匠たち「宇野誠一郎」簡易報告


今回の講座、濱田氏の宇野誠一郎さんへの思いは存じていたので、すばらしいものになると期待していましたが、それ以上に充実したすばらしい内容でした。宇野誠一郎さん夫人(声優・女優の里見京子さん)もゲスト出席なさっていて、数々の宇野氏創作の楽曲を聴きながら、濱田氏の宇野誠一郎さんとのとても長い年月を費やしたアーカイブ作業をとおしたご交流、宇野さんについて、その作品についてなど、井上ひさしさんとのこまつ座のことなど、いろいろなお話をうかがうことができました。

宇野誠一郎さんの作品、作風などについては、濱田高志さんも、自分がとらえいた「へんてこな」(もちろんよい意味で)というのと、同じようなとらえ方をされていたのも、うれしかったです。「宇野さんの曲は、なんかへんなんですよね」と賞賛としての「へんさ」をとなえられていて。

その後、さらに考えてみて、英語でいうところの「Sensational(センセーショナル)」や「Sentimental(センチメンタル)」など、要するに、感覚「Sense(センス)」にうったえかける直感的な何かをもっているということなのかなぁ、などとも思ってみたりしたのです。

この講座では、いくつものまだ聴いたことがなかった宇野作品に触れることができたのですけれど、中でも、この「sense」の部分にかなりうったえかけられた曲が。

それは、1970年に、日本ビクターから芸術祭参加作品として発売された『21世紀のこどもの歌』というアルバムに入っているという、『宇宙サーカス団』という曲。



この曲のもつ未来的スピード感、対するワルツ的サーカスのイメージ、星、宇宙をイメージさせるシンセサイザーのサウンド、澄んだ少年たちの歌声、なんともいえず…一瞬にして、心をうばわれてました☆
まさにセンセーショナルな☆

この曲、『宇宙サーカス団』ほんとにすばらしく、宇野誠一郎さんの作品集など、ほかにもそろえたいものはたくさんあるのですけれど、このアルバム『21世紀のこどもの歌』どうしても欲しい、と。
このアルバム自体は、すべて宇野さんの作品というわけではなく、提供曲は4曲。
ただ、このアルバムの企画コンセプトそのほかを伺って、これはますます欲しい!!ということで、さっそく翌日、購入:D

[21世紀のこどもの歌]
このアルバムは、21世紀はどんな世界になって、こどもたちはどんな歌を歌うのだろう、というコンセプトをもとに、作詞陣に、小松左京、筒井康隆、星新一、手塚治虫、飯沢匡、杉紀彦(敬称略)、と、日本SF黎明期の代表的作家や放送作家、アルバムのイラストなどアートワークを手がけた真鍋博を迎え、ストーリー性のある未来への夢のタイムカプセルのような詞世界を、小森昭宏、宇野誠一郎、越部信義、山下洋輔という作曲家たち、一部の編曲を船木謙一が歌に紡いだという作品。

この2日間、何度もくり返し聴いてます。

宇野さんの作品は、もちろん、アルバムの収録曲ですべてが、それぞれ、すてきに、すばらしくとんでもない。
夢いっぱいのわくわくのタイムカプセル☆
(昭和的21世紀感覚でもあります)

さきの曲、『宇宙サーカス団』はなかったのですけれど、アルバムの1曲め、『宇宙都市の夕ぐれ』が動画でみつかりましたので。

宇宙都市の夕ぐれ
作詞:飯沢匡 作編曲:小森昭宏
歌:麻里圭子、ボーカル・ショップ、杉並児童合唱団



以下、収録曲。ちょっと感想や印象もそえてみることにしました。

1. 宇宙都市の夕ぐれ  作詞:飯沢匡 作・編曲:小森昭宏 歌:麻里圭子、ボーカル・ショップ、杉並児童合唱団
☆こどもたちのすんだボイスのはじまりが、夕ぐれどきにぴったりのイメージ
☆あこがれ:「成層圏までパパのお迎い」、「海底都市のレストラン」

2. 宇宙サーカス団  作詞:真鍋博 作曲:宇野誠一郎 編曲:船木謙一 歌:麻里圭子、フレーベル少年合唱団
☆シンセサイザーの宇宙浮遊感
☆あこがれ:星座の曲芸、惑星巡るサーカス団

3. アンタレス星人のうた  作詞:筒井康隆 作曲:山下洋輔 編曲:船木謙一 歌:フレーベル少年合唱団、ボーカル・ショップ
☆サウンドが70年代らしくサイケにかっこいい(いわゆるグルーヴ)。ボーカル・ショップのすこしおどけたサポートが愉快で秀逸
☆アンタレス星語がハナモゲラ語的
☆フリージャズな要素、こどもたち、わいわいきゃーきゃー。アンタレス星人

4. 星々のおばけ  作詞:星新一 作・編曲:越部信義 歌:麻里圭子、ボーカル・ショップ、荒川少年少女合唱団
☆ラリルレロな星星とおばけたちのキャラがユニーク。「おはなし」、「絵本」的な1曲

5. 月っ子のうた  作詞:杉紀彦 作・編曲:越部信義 歌:麻里圭子
☆あこがれ:月っこの小さなカプセルのごはん
☆ベースとドラム、ホーン、オルガンがきいた、ひじょうに懐かしいグルーヴィーなサイケ・サウンド

6. ケンタウロスの子守唄  作詞:筒井康隆 作曲:山下洋輔 編曲:船木謙一 歌:麻里圭子、ボーカル・ショップ、(フレーベル少年合唱団)
☆フルートがすばらしい(多くのジャズプレーヤーが参加しているらしいです)
☆さびしげな曲。浅川マキさん、のちにカヴァー

7. さよならロボットばあや  作詞:飯沢匡 作・編曲:小森昭宏 歌:麻里圭子、ボーカル・ショップ、杉並児童合唱団
☆ボーカル・ショップによる「ばあや」の声がコワオモシロイと同時にやさしさを表現

8. 月からのたより  作詞:飯沢匡 作・編曲:小森昭宏 歌:杉並児童合唱団
☆月の基地、アポロ着陸から100年たった未来のお話
☆「スミレの花束」なんとなく未来派イメージかな

9. 三つのプレゼント作詞:真鍋博 作・編曲:宇野誠一郎 歌:麻里圭子、(ひばりヶ丘少年少女合唱団、ボーカル・ショップ)
☆宇野さんも好きなメロディーだとか
☆潜水艦、海の中を感じるシンセの音のおもしろみとバックのひかえめなピアノの音の美しさのコントラスト

10. おじいさん  作詞:杉 紀彦 作・編曲:越部信義 歌:麻里圭子
☆ボーカル・ショップの「おじいちゃん」のイメージのコーラスがあたたかくユニーク
☆未来のハイカラおじいちゃんのイメージ

11. ぼくのうちのロボット君  作詞:真鍋博 作曲:宇野誠一郎 編曲:船木謙一 歌:ひばりヶ丘少年少女合唱団
☆聴いていて、おもわず笑いました:D
☆宇野さんらしい作品で、船木さんのアレンジも良

12. ほらパパ見てよ  作詞:手塚治虫 作・編曲:宇野誠一郎 歌:麻里圭子
☆美しいイントロと、つづくドラムとベースのきいたサウンドの対比がすばらしくかっこいい

13. ファクシミリ・マーチ  作詞:杉 紀彦 作・編曲:小森昭宏 歌:荒川少年少女合唱団
☆このころの未来は、やはりファクシミリなのですね。この点は、想像以上のものとなりましたね

この作品は『21世紀のこどもの歌』、芸術祭参加作品ということもあり、商業的な色合いがあまりないこともあってか、夢あふれる企画とレベルの高さに反し、その後は、そのままになっていたものだそうで。
国会図書館でねむっていた作品を濱田氏らがみつけ、このCD再販といたったということです。発売されたのは、数年前のことなのですね。でも、まさにいまの気分にぴったりで☆
いつものごとく、その再販作業は、ただのCD化ではなく、作家陣へのインタビューも加わったすばらしいワークとなっています。残念ながら、そちらでも、お話を伺えることができた、小松左京さん(小松左京さんは、もともとのアルバムでもお話のような曲目解説をされてます)も宇野誠一郎さんも、そのほかの方々も、いまは遠い世界にいってしまっていますけれど。

出会ったことに、心から感謝したい、すてきな作品です…

そして、また、あらたな広がりなどもいただきました。

気づいたこと、気になることなど:
-麻里圭子さんの曲による歌い分け、すばらしいですね
-参加ミュージシャン演奏情報があったらよかったなぁと
-それぞれの児童合唱団のことが気になっています。特にフレーベル少年合唱団
-ボーカル・ショップ、いままでも、アニメやこども番組の主題歌などで目、耳にはしていましたが、さらに関心をもつにいたっています。すばらしいボイス、ハーモニーと歌の演技ともいえる表現(テナーⅠ:小保方惇、テナーⅡ:渡辺長生、バリトン:高沢明、バス:柴田昭司)

真鍋博さんのアートワーク、とてもすてきですね。

星新一さんの小説のために描いた挿絵からセレクトした『真鍋博のプラネタリウム』ほしいなぁと(ちょっとプレミア価格になってしまってるようですけれど…)他界されたのは、2000年。「21世紀をこの目で見たいと、後年は健康に気を使っており、自身の未来のイメージは、人と自然が共存する世界だろうと語っていた」そうです。

インタビューで印象にのこったこと。

宇野誠一郎さんの「子供の歌、と言いますけれど、子供が歌える、歌えないということを決めつけて作るのは間違ってるんです。常に"大人が子供に限界をあたえるな!"という想いがありますね」というのは、まさに自分が氏の作品全般に対して感じていたことなので、やっぱりそうだったんだぁ、と。
小松左京さんの「…でも、こどもこどもっていうけど、宇宙の歴史や地球の大きさを考えるとどんな奴だって、皆こどもになっちゃうんだよ」というコメントも。

ただ、この作品を通じて、作詞、作曲の方々は、「夢の未来」だけを語っていたわけではないのですね。こちらもご両名のコメントが印象的でした。

宇野誠一郎さん「"予測はあたらない"ということで"、"21世紀はこうなる"と予測して作ることだけはやめようと思っていました。ですから、その時点での新しい技術を組み込んで、自分の想いを表現することで処理したんです。予測などせず、現実と対峙し、周囲の変化を受け止めながら、それに対応する力をつけよう"というのが僕の考え」
小松左京さん「あの頃は未来論がいっぱい出ていて、実際こんな感じの企画がたくさんあったんですよ。取材のテーマも"明るい未来像"というものばかりで…SFは文明批評だから、このまま科学技術が暴走すればどうなるかを、…」

田中雄二さんによる『21世紀のこどもの歌』の電子音の正体とは?
では、日本でのシンセサイザー、初めて入ってきたころのことなど、ちょっと気になっている話題が語られ。
音表現に関して、冨田勲さん、宇野誠一郎さんの電子音の使い方のちがいなども、まさにそんなイメージかな、という興味深いものでした。

世代によるこどものころの音(なんとなく思ったこと):
いわゆるグルーヴィーといわれる音やサイケデリック・サウンド、それぞれとらえ方がちがうと思うけれど、自分にとってこどもの頃の郷愁的サウンドでもあって好きなのです。宇宙イメージなシンセもしかり。こどもものにもふんだんに使われていた音要素。
こどもの音楽は意外と新しく実験的な作品も多いのですよね。
このアルバムの音は、まさに、自分のこどものころの音のイメージです。
なんだか、各世代のすり込みの音ということに興味がでてきました。 


わ~、という感じで、われながら、またもや、長いです、この投稿。。。
なんか、スペースが、たりなくなってきてしまって…
TV AGE講座 テレビ・映画音楽の巨匠たち「宇野誠一郎」講座のことは、これから、機会にあわせて織り込んでいきたいと思います。

講座の前には、中古レコードの「だるまや」さん
季節のパフェを食べに「千疋屋総本店フルーツパーラー」にいきました。
ぶどうのパフェ、美味でした~ :)
ココナッツカレーも、おいしかったです。

また、今回も帰りには、「スナック馬場」、に、よらせていただきました。
すてきな音楽と空間。ほんとにすてきなお店です。
もっとレコードの写真とらせていただけばよかったなぁと、あとで思ったり。
次回、訪れるときには、忘れずにと思ってます。

写真、前回のものとまざっていますけれど…



(投稿:日本 2011年9月27日、ハワイ 9月26日)

にほんブログ村 音楽ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 音楽ブログ 思い出の曲へ

0 コメント