先日は、80年代イギリスのファンカラティーナ系グループ、Blue Rondo A La Turk についてふり返りながら、そこから、ジャズ、Dave Brubeck のアルバム『Time Out』収録の同名曲へということにもすこし触れたのですけれど、レコード三昧であった高校生のころ、タイトルに惹かれ、買ってみた作品がありました。
チャールズ・ミンガス(Charls Mingus)の『Pithecanthropus Erectus』(1956年、アルバム発売当時の名義はチャーリー・ミンガス)。
このアルバムを入手したのは、いろんなものを聴きだした高校生のころで、すこしだけジャズっぽいものにも興味があったりした頃のことなのですが、「なぜにタイトル買いをしたのか?」というのは、「ピテカントロプスエレクトス」であったから…という(さすがに別物であるのはわかっておりました)。
興味津々で購入し、でも、なんだか、むずかしくってそのままにしてしまったシリーズのひとつ…
ということで、また、眠ってるレコードたちを聴く、の一環として、長らくの時を経て、聴いてみました。ライナーノーツもちゃんと読んでみました。
収録曲:(アルバム邦題、そのまま「直立猿人」)
Pithecanthropus Erectus(直立猿人)/ A Foggy Day(霧深き日)/ Profile Of Jackie(ジャッキーの肖像)/ Love Chant(ラブ・チャント)
スタンダードなナンバーである『A Foggy Day』以外は、ミンガスのオリジナル。このアルバム作品、というか、チャールズ・ミンガス自体が、ですけれど、いわゆるハード・バップのひとですね(この辺のちがいも、やっとすこしわかってきましたよ)。
英語、日本語ともに解説を読み、そして時代のこととか、いろいろと考えながら聴いてみたると、いろいろと思うとこ、考えるとこ、ありでした。
なので、そんなことを中心に。
チャールズ・ミンガスは、もともとルイ・アームストロングやライオネル・ハンプトン楽団にベースとして参加、1950年代前半には、チャーリー・パーカーやバド・パウエルとも共演し、その後、自らのグループを。
この『Pithecanthropus Erectus』は、自主レーベルである「デビュー・レコード」から、アトランティックに移ってのはじめてのアルバムなのですね。物語性、メッセージ性もあるオリジナリティあふれる作品として注目をあびたという作品であるそうです。
ミンガスは、ゴスペルの影響はもちろん、ブラックの人権問題、人種差別への抵抗なども強く意識していたということもあり、ジャズを通じた表現活動と追求を通じて、ここまでのことができるんだ、ということを伝えたかったような気もするのですよね。
ただし、そういう抵抗がありながらも、息が合い(音楽だけではなく、おそらく考え方もでしょう)ミュージシャンであれば、どんな人種でも、もちろん白人もメンバーに加えたと。短いあいだではありますが、秋吉敏子さんも一緒に活動されてたこともあるようですね。
ここで、この秋の命題、迷題でもある「ジャズはむずかしいのか」ということなども考えてみたのですけれど、そういったメッセージとともにあるジャズは、思想や社会的なメッセージなどとの関係も深く、たしかに、むずかしいものではあると、やっぱり思います。1曲、1曲も長いですしね。
ただ、別の方向性をもった名の知れたジャズマンもいたので、この手のバップなどに顕著であるむずかしさは、その後の運命を決めてしまったのか、というのは、なかなかにこたえを出しづらいなぁ、とも思ったりします。
自分が好むものは何かということとは別として、ある時期、社会全体が、さまよいながら、若者を中心に「むずかしいこと考える」時代があったのも事実(これは、ポーズ、本気どちらもです)、それは、映画、文学など、すべてにおいて(作品としては、そういう時代より早いのですが、その時代、1960年代半ばあたりにも聴かれていたのは確かであり)。
そこで、最近読んだ『昭和ジャズ喫茶伝説』にあった一節なども思ってみるのですけれど。こういうジャズこそ、「ジャズは、ジャズ喫茶で聴くものだ」的なのかなぁ、とも。
引用:
「ジャズは、生演奏がいちばんというのはまちがいないが、生演奏はときどき、演奏するやつが邪魔だ。部屋で聴くと、自分が邪魔だ。ジャズは、ジャズ喫茶で聴くものだ…」
オリジナル作品には、チャールズ・ミンガスらしさというものがあふれていますけれど、スタンダード曲のカヴァー『A Foggy Day』では、なるほど、こういうインタープリテーションもあるのかぁ、と、つくづくでしたので、こちらに。
Charles Mingus Jazz Workshop:A Foggy Day
作曲:ジョージ・ガーシュウィン(George Gershwin)作詞:アイラ・ガーシュウィン(Ira Gershwin)こちらには詞はないです
原曲の舞台は、ロンドンでしが、チャールズ・ミンガスは、サンフランシスコの霧の日をイメージ。交通整理の警官のホイッスル、車のクラクション、救急車のサイレンなどをイメージした音をとりいれての作品となっています。
レコーディングとして最初の作品は、フレッド・アステアのものなのですね。
Fred Astaire:A Foggy Day (1937)
それにしても、このミンガスのほかも、『A Foggy Day』は、もともと、ロマンチックなものや、センチメンタルなもの、哀愁漂うよなものなど、さまざまな解釈で、歌われたり、演奏されている曲ですね。ほかの作品もいくつか聴いてみましたけれど、かなり長くなってしまいますので、また機会があるときに。
(投稿:日本 2011年11月21日、ハワイ 11月20日)
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