引きつづきの映画関連で、先日訪れた東京国立近代美術館 フィルムセンターの常設展「日本映画の歴史」で出会ったものから。

こちらには、日本映画の歴史をたどる数々の貴重なコレクションがあり、名画とよばれる日本映画を代表ずる作品から、いままで知らなかったようなものまでさまざま。

特に興味をもったのが、1920年代、1930年代あたりの日本のアニメーション黎明期作品。正直、日本のアニメがこんな早い時期から発展していたとはまったく知らずなのでした。
(考えてみれば。。ではあるのですけれど)

大藤信郎、山本早苗、村田安司、北山清太郎など、アクティブな先駆者の方たちが何人かいらしたのですね。

なかでも、そのイラストのタッチや動きのかわいさにひかれてしまったのが、大藤信郎氏の作品でした。

東京国立近代美術館 フィルムセンターで目にしたのはこちらの作品。展示室の小さなモニターに、ほかの黎明期作品とともに、常に上映されているようです。

大藤信郎:天狗退治(1934年)
ちょっとBetty Boop にもタッチが似てますね。ほんとにかわいらしいのです。



展示には、もちろん大藤信郎氏についての略歴や作品解説などもあったのですけど、さらに知りたくなって。ほかの作品もないものかと、帰宅後すぐに調べてみたりしてみました。

黒ニャゴ(1929年 千代紙映画社 画:大藤信郎) 歌:平井英子



レコードトーキー方式で上映されていた作品。音声はSPレコードをシンクロさせてかける方法ですね。
初期ということで、歌の内容にそった物語的な内容で。

千代紙映画社という社名にもあるとおり、大藤信郎初期の作風は、千代紙をもちいた切り絵をアニメーションにしたものが特徴。

歌詞のとびはねるような動きも楽しいですね。この当時、すでにこんな楽しいアニメ作品があったなんて☆
平井英子さんのおうたもかわいらしく。
ほんとうに感動してしまい、なんだかとってもうれしくなりました。

村祭(1930年 千代紙映画社 画:大藤信郎) 歌:平井英子



Wikipedia:大藤信郎
「(大藤信郎氏は)東京浅草の蓄音機録音スタジオを経営する家で、8人兄弟の7番目の子として生を享ける。18歳で日本アニメ界の創始者の一人、幸内純一のスミカズ映画社に入って動画を学ぶ。1921年、21歳で自らのスタジオとして自由映画研究所を設立し、初の劇場公開作『馬具田城の盗賊』(1926年)の好評を受けて1927年には千代紙映画社と改名した。こうした初期の短篇アニメーションは劇映画の併映作品として一般に公開され、『鯨』(1927年)や『珍説吉田御殿』(1928年)はソ連やフランスでも上映されている。しかしアメリカのトーキーのカートゥーン作品が輸入されるようになると、大藤の千代紙作品が劇場公開される道が閉ざされたため、セル・アニメーションのカートゥーンにも携わるようになり、一時は政岡憲三とも共同で製作をした。1930年代から終戦までは文部省や海軍省から委託された作品を主に製作し、技法としては影絵映画を志すようになった。宗教団体のスポンサーによって日本の神話や仏教を題材とした作品を作りつつ、色セロファン影絵という独自の技術を磨いて自主製作で『くじら』と『幽霊船』を完成させた。それらは商業的な成功を得ることはなかったが、『くじら』と『幽霊船』は海外の映画祭で高い評価を受けて、当時日本では過去の人となっていた大藤の名を残すこととなった。
大藤の長姉の八重は、信郎が6歳のとき母親が死去して以来、母代わりとなって公私にわたり末弟の信郎を支援し続けた。スタジオの機材一式を買い与え、姪の芳枝とともに助手として、弟子のいない信郎の創作を手伝ったのは八重であった。1961年、長篇作品として企画していた『ガリバー旅行記』と『竹取物語』の完成をみることなく信郎が脳軟化症によって没すると、八重はその全財産を毎日映画コンクールに寄託。その基金を元に1962年より大藤信郎賞が設けられた。またその後大藤の遺品は八重の手で東京国立近代美術館フィルムセンターに寄贈された。大藤と八重の墓所は神奈川県小田原市の時宗蓮台寺にある」

海外の映画祭でも賞を受賞するなど。ピカソやコクトーにも絶賛されたとは。でも、たしかに、ですよ。その評価に値すると思います。

千代紙の後も影絵、セロファンなど様々な素材をもちいた手法を使い分け、夢のあるアニメの世界をつくりあげた方なのですね。

「毎日映画コンクール」でも大藤信郎賞という賞があるほどの方なのですね。
この大藤信郎賞は、手塚治虫さん、和田誠さん、川本喜八郎さんなど、なるほどと納得されるような方が受賞。
なんとなくその描く世界は、たしかに、ですね。
Wikipedia:大藤信郎賞(受賞作品リストあり)

さらにいろんな作品をみてみたくなりました。
DVDでの作品集などもでてるのですね。

(投稿:日本 2012年4月1日、ハワイ 3月31日)

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